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竹島 Blog 4/道に迷って助けてくれるのは

変な話ですが、「道に迷った」といえば自分の中でいつも思い出すエピソードがあるのでお話ししようと思います。

私は前職、公務員をしておりましたが、10年ほど前の話です。仕事でパリに1か月ほど滞在したことがありました。当時から大人しくなかった私は、プライベートな時間は皆が外出を控えて静かに過ごすことを良しとする空気の中(仕事で来てるので事故を起こすと非常にマイナス評価になる)、一人でパリ中を探索して回っていました。1月の真冬の中、当然日が暮れるのも早いですが、仕事が終わってからいつも外出して街を歩いていたように思います。

教会や美術館、公園や橋などももちろん歩きましたが、やがては有名どころの「駅」も回ってみようと思いました。クロード・モネで有名なサン・ラザール駅(1877年)にも行きましたが、一番興味があったのは映画『ニキータ』が撮影された「ル・トラン・ブルー」というレストランのあるリヨン駅でした。・・そしてこの駅が迷宮地獄となったのです。

まず、単純にそのレストランが見つかると思って構内に入ったはいいが、駅が広すぎて自分がどこにいるのかわからない。また、駅の中は場所により明暗が分かれすぎていて、明るいところと暗いところの差が大きかったのです。そして迷って迷って私が出た地上は電車などない、ただっぴろい廃線場でした。見渡す限り人など生き物はいなく、そういえばこの線路に上がる階段の下には、よくわからない黒人が数人転がって寝ていたな・・という感じのところです。さすがの私も早く明るい場所に戻らなくてはと思い、出口を探して歩き回り、やっとTAXI乗り場の標示が見えたので、助かったと思って近くまで行きました。しかしタクシーは確かに何台も並んでいるのですが、乗っているドライバーは皆、こう言ってはなんですが動物様に見えました。ここのタクシーに乗せられたら、どこに連れていかれるのか・・という感じのタクシー乗り場でした。もちろん夜でしたので様々な人種の方がシルエットに見えたこともあり、必要以上に恐ろしく見えたのでしょう。

再び地上に上がるためのルートがわからず、よくわからないエスカレーター地獄の中で苦しんだ末に、最後は「誰かに出口を聞こう」と決断しました。そこにはモップで拭き掃除をしていた掃除夫のおじさんがいたので、後ろから肩越しに話しかけました。

「Excuse me.」 「Excuse me.」

 

水色のオーバーオールを着ていて、体格がいいおじさんは後ろから話しかけたとはいえ(掃除用の帽子が「マリオ」を連想させたこともあり)きっと親しみやすい人だろう、と勝手に思っていました。

「Excuse me.」

しかし、振り向きません。再度呼びましたが、反応がないので聞こえていないのかなと思って、トントンと彼の右肩をたたきました。

「Excuse…」

くるっと彼は振り向きました。
私は一瞬言葉を失いました。

右目は私を見ている。しかし左目は斜め上を見ている・・斜視、いや・・義眼だ。
1秒、時間がかかりました。失礼な態度をとらないように。

しかし、彼は本当に親切でした。空気を察して、私を安心させる会話と動きをしてくれました。
私は入ってはいけないレーンに入っていたらしく、チェーンを取って元のレーンに私を戻してくれました。

「地獄に仏」とはフランスに失礼かもしれませんがそのくらいの状況の中、インパクトのある出会いでした。人生で道に迷ったら助けてくれるのは自分の全く予測しない人かもしれません。

結局迷宮ルートから抜けた後、すぐに「ル・トラン・ブルー」というレストランは見つかり、その下からレストランを覗きました。

アジア人の女性が目立ったのか、レストランはかなり高い階上にあったけど、数人の黒人のボーイの人が走ってきて、レストランに寄っていけ、寄っていけと誘ってくれました。しかし、あまりに誘いが強烈だったこと、夜も遅くなっていたこと、そして先ほどの迷宮地獄から生還した気持ちになっていたことでそれ以上冒険する気分にもなれず、引っ張られる腕を何とか振りほどいて、リヨン駅を出ました。今思えば老舗フレンチのお店でお酒の1杯も飲んでくる気概があっても良かったのかとも思いますが。

以上、何が言いたいのかよくわからなくなりましたが、人生困った時には意外な人が助けてくれて、意外な人が遊ぼうと誘ってくれるかもしれない、ということにしておきます(笑)

 

ナチュラルケア水道橋外来センター

文:竹島