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竹島 Blog 3/ライラックとラフマニノフ

先日近所のお花屋さんでライラックという花を見かけて、以前見たロシア映画を思い出しました。

『ラフマニノフ ある愛の調べ』(2007)。ロシアの作曲家・ピアニストであるセルゲイ・ラフマニノフ(1873年 - 1943年)の生涯を、3人の女性との関係を通して描いています。英題は『Lilacs』

この映画は見ていてスッキリする内容(筋の通ったドキュメンタリー作品)と言うより、芸術的観点からさまざまな脚色を施したであろう内容になっています。そこに象徴的なものとして使われているものがライラックの花束。かつてロシアでラフマニノフがアンナ(最初の恋人)に送ったのもライラックの花束で、亡命先のアメリカで苦悩している彼のもとに届いたものもライラックの花束でした。(確か送り主は不明。)
しかしあれだけ象徴的に使われたので、私の中でライラックを見る→ラフマニノフを思い出す、ように刷り込まれてしまったんですね。

ラフマニノフといえば私の大好きな作品が『ピアノ協奏曲第二番ハ短調』。最近は『のだめ・』でも使用されていたので記憶に新しい人も多いのではないかと思います。第2楽章は第二次世界大戦直後、イギリス映画『逢びき』のテーマ音楽に使われて一躍知られるようになったようです。

この曲は人生の悲しみや苦悩を表すような曲調で始まりますが、最初のピアノの「入り」の部分はドラマチックな後半を予想させるようで、とにかく引き込まれます。様々な方が演奏されているのでしょうけど、私が好きなのはツイマーマン。テクニックが凄いです。どんな難所も最高のタッチですいすいかわしていきます。そして本曲には展開があり、始まりは暗い調子ですが、7分あたりで力強く、未来が開けた調子に切り替わります。ラフマニノフの心の変化が曲に反映されているのでしょうね。

ラフマニノフは本曲を作曲中、強度の神経衰弱におそわれ、あらゆる治療を試みたが効なく、絶望的になっていました。そこでニコライ・ダール博士という精神科医である催眠術の大家に出会い、彼の献身的な努力によって全快、この博士に励まされながら作曲を再開したそうです。きっとこの曲はダール博士に捧げられたのでしょう。

ものを創り続ける芸術家の苦悩については計りしれませんが、天才の裏にそれを支えた治療家が存在したことに変な満足感を覚えました。様々な方の人生を受け止め、献身的に支えられる人間になりたいです。

 

ナチュラルケア水道橋外来センター

文:竹島